お姫様と若頭様。2nd
彼女が戻って来たとき、
翠や羽は声をかけようとした。
だけど、それは声にならなかった。
以前から感情をあまり表に出すことは少なかった彼女。
普通なら気づかないかもしれない。
だけどその時の彼女は
あまりにも違い過ぎた。
彼女の瞳には何も映っていなかった。
瞳の中は暗い闇に満ちていて、
彼女の雰囲気や立ち振る舞いは
全てが以前の彼女とは違って見えた。
俺ら以外誰も気づかないほど僅かに感じる殺気のような何か。
思わず一歩後ずさりたくなってしまうほどの他人を寄せ付けない雰囲気。
以前より幾分か周りに愛想を振りまいているのに感じる違和感や僅かな恐怖。
彼女に何かが起きたのは明確なのに、何もできない自分が酷くもどかしかった。