お姫様と若頭様。2nd
彼女がいなくなってから総さんもどこか
焦ったような、イラついているような、
そんな悪い雰囲気を漂わせていた。
俺よりずっと過保護な総さん。
あの人も彼女の過去を知っている分、
余計にそうなってしまったのだろう。
いつか彼女が言っていた、
"彼がいない世界"
あいつのことを想うが故の暴走に、
総さんは黙って彼女を見守っていた。
苦しむ彼女を見守る総さんの視線は、
彼女の本当の親より親らしくて、
二人の絆を感じていた。
こんなこと言うのはあれだけど、彼女の両親は親失格だ。
放任主義にしては度が過ぎる。
でも必要な時だけ彼女を側に置いて人形のように扱って。
彼女と両親達がプライベートで買い物することなんて一度も聞いたことない。
私生活には必要以上干渉しないのが彼らのやり方。
それでも家の為に、何かを強制させることもある。
初めて会った時彼女があんなにも弱っていたのはその所為だと思う。
彼女があの時でも本当に時々見せた無表情は、瞳の奥に深い闇が見えたから。
聡さんだってそれに気づいてて彼女を俺に任せてくれたのだと思う。
突然の聡さんからの頼み。
それは彼女を俺の学園に入学させること
だった。
自由も全て奪われた高校で、彼女は中学の時のような失敗はしないと、いつか俺たちに教えてくれた。
中学の時の失敗が何か彼女にはまだ聞けていないが、
彼女はなんてことないように言った。
"私は皆が思うほど辛くないよ"
その言葉を聞いて思わず、
"それは感情を殺しているから?"
と、聞いてしまいそうになった。
その質問に彼女が答えてくれることはきっと一生ないのだと思うが。