お姫様と若頭様。2nd


私が学校に来なくなったことに関して、
学校へ行く回数が減ったからなのか、
それとも彼らなりに気を遣ってなのか、
誰にも詮索されることなく過ぎた日々。



学校へは全く行かず、今は自分がいなくなった3ヶ月分の仕事を終わらせるのに尽力していた。


これほど大きな財閥ともなれば仕事の量が多くなるのも必然で、今は何も考える暇もないほど仕事に明け暮れた。


だけどその仕事も終わって来た最近、
どうしても彼の表情や仕草が頭を過ぎり
必死で振り払った。



今のところ紅蓮や彩狼、黒炎が潰れたとの情報は入っていない。

それだけが今の私の救いだ。



「お嬢様、お時間です」



だけどそれ以上考えることを許さないかのように呼ばれた仕事の報告に、
私と彼らじゃ生きる世界が違うことを嫌でも感じさせられる。



毎日告げられるスケジュールは超多忙。


まるでもう逃げることは許さないと
両親に警告されているようだった。





廊下を歩いていると、突然見知った人物が見えた。



「…お嬢様」


今日も素敵な容姿。
綺麗な立ち振る舞い。
皆を虜にさせる独特な雰囲気。



「…っ…夕梛」



なんだか1年以上も離れてしまったような気分だ。

また少しやつれたように見えるのはきっと私の所為なのだろう。




「…そっちはどう?上手くやってる?」


なんでもない風を装うけど、
実はずっと顔が見たかった。

前はずっと一緒にいただけに、今はこんなにも懐かしい。



「えぇ…お嬢様は大変素晴らしい功績を残していらっしゃるようですね」

やっぱり疲れている彼。


「…夕梛っ、
…何「お嬢様、急ぎましょう」…」


何かあった?


その言葉を紡ごうとした時、隣にいた秘書に遮られた。

きっと私と夕梛をあまり近づけさせないように命令されたのだ。



「お嬢様どうか私のことはお構いなく」


そう言ってお辞儀をした夕梛に、今までで一番の距離を感じた。




「…分かった」




だからそう言うしか方法はなくて。


きっとこれ以上彼といたら彼に迷惑がかかってしまうから。





私が我慢すればなんてことない。

私が感情を殺しさえすれば
全てが上手く行く。



< 46 / 69 >

この作品をシェア

pagetop