お姫様と若頭様。2nd


彼に連れられて来たのは、いかにも高級そうなホテルのレストラン。


席に着くとすぐに料理が運ばれ、
彼の視線が突き刺さる。












「本日はお食事に招いていただき、
ありがとうございました」


あの後彼がほとんど話し続け、
食事を終えた。

彼が私から視線を外すのはほとんどなく
ずっとどこかもどかしそうにしていた。


この後のことなんて想像するだけ無駄。

きっと彼の考えていることなんて
私にとって嫌なことでしかないから。



だけどそれは同時に、家にとっての利益となるかもしれないわけで。


突き放そうにも突き放せない。


やりようのない怒りが渦を巻いていた。



「楪さん、この後も私に付き合ってはいただけませんか?」


「……あの、申し訳ありませんが私、この後は仕事がありますので…」


すると彼は初めて
私の執事の方へと顔を向けた。


「おい、そこの」

「はい」


随分と偉そうな言い方。
私と話す時とはまるで違う声音。

「スケジュールを管理している者に
連絡をとれ。
空きを作ることは出来ないのか、と」

「かしこまりました」


私の執事も誰かから聞かされたのか彼の命令を真っ先に聞いた。


…もし夕梛なら……。

彼は今屋敷の外に出ている。

私の両親はどうやら、
私と彼を絶対に会わせたくないらしい。

だから私と彼が離されたあの日から、
お互い見かけることすらしなかった。



「すみません、どうやら予定が詰まっているようでして…」

その言葉にホッとした。






だけど…


「俺が空けろと言っているんだ!

直接言ってやってもいいんだぞ?」



凄い豹変ぶり。
執事も怯えた表情を見せた。

直接言ってやる…それはつまり、会長に自ら掛け合うと言うこと。

そんなことになっては、きっとクビは免れられないだろう。



「…お嬢様、」

そして私に助けてと視線で訴えた。

…夕梛ならもっと…。
やっぱり私には夕梛が必要で。



















「…わかりました。

ご一緒させていただきます」













だけど私は一人の人間である前に、
峯ヶ濱の後継者だ。


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