お姫様と若頭様。2nd
「ユズ…ユズ…っ!」
あぁ、ダメだ。
隠そうとしていた傷が疼く。
彼を失ったと思った時の心の傷が。
だけどそれと同時に、
封印しようとしていた気持ちも、
彼の優しさも、
全て全て、大好きな彼。
「…ょ、ヨル…っ!」
あぁ、こんなにも愛おしい。
心が震え、体が燃えるように熱い。
彼の姿から一時も目が離せない。
まるで彼だけこの空間では異質な存在のようで。
紅を流し白に包まれ横たわっていたあの彼が、今私の目の前にいる。
その事実だけで、私は無性に泣きそうになってしまった。
触れたい、触れたくない。
矛盾した想いが私の心に響く。
彼に触れて温もりを、彼がここにいることを確かめたい気持ちと、
彼に私の穢れを移してしまいたくない気持ちと。
それらが複雑に絡み合い、私は彼の名前を呼ぶことしか出来なかった。