お姫様と若頭様。2nd

Take31










「もうここまで来れば大丈夫だろ」



そう言って彼が止まったのは、いつか一緒に来たことのある公園。


「あの男、榎原の跡取りだったよな?

あいつとユズ…婚約するのか?」


もう頭の中がグチャグチャだった。
彼の問いにも答えられないほどに。




「おい、ユズ」

痺れを切らしたように、私の頬を掴んで無理矢理顔を合わせられた。

…彼に合わせる顔なんてないのに。




「久しぶりだな、ユズ。


前よりだいぶ…変わったな」


そして私と目が合うと笑顔を向けた。







その瞬間、胸に広がる春のような温かな感覚と共に、

私の頬に一粒の涙が溢れた。




私の変化に気づいてくれるのは、
いつだって彼だった。




そしてまた以前のように涙を拭ってくれる彼に…懐かしい"感情"が姿を現した。










「……ごめんなさい…ッ!」


とにかく謝らなければと…そう思った。



「…ユズは…何に対して謝ってる?」

どこか不安そうな瞳でそう尋ねた彼。






「何って…あなたを傷つけたことだよ」


"私の一生消えない罪"

あの日から、私はそう思っているから。



「それは、何のこと?」


「……私のせいであなたが……危険な目に遭ったこと。

……私の都合なんかで、あなたに勝手に会いに行ったこと。




…今まで私がしてきたこと全部だよ」



本当はあなたと出会ってしまったことを
あなたに謝りたかった。


"一生消えない傷"を、
あなただけに負わせてしまったから。


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