お姫様と若頭様。2nd
そう言って頭を下げたまま少しだけ恐る恐る顔を上げると、彼の辛そうな顔が目に入った。
「……ユズ…」
呼ばれて頭を上げまた俯いた。
彼の言葉がこのまま続くかと思って待っていても、彼は黙ったままだった。
「……私は…。…今まで誰もそのことに触れなかったけど……私は逃げたの。
本当は私のせいであなたが傷付いたのわかってたのに…皆に教えなかった。
あの日のことを知る人はほとんどいなくなった。苦しくて…辞めていったの。
私が紅蓮の皆を騙してたんだよ……。
私自身が善い総長でいるために!!
…最低なんだよ、私……」
誰も知らないならいいとそう思ってた。
誰も知らず、私について来てくれるならそれでいいと。
だけど心の何処かでは思ってたんだ。
私は皆を欺いてる"裏切り者"だって。
私を総長と呼び慕ってくれている皆に、
私が狡い人間だと知られたくなかった。
皆の前では善い人間でいようとした。
それが、
私が罪から逃れたいと思っていた証だ。
「…軽蔑するでしょ?
ごめんね、こんな私で…。
失望したでしょ?
…本当にごめんなさい」
謝ることしかできない。
それが凄く凄く悔しい。
彼は優しいから。
だから私を殴れと言っても殴りもしないし貶したりもしない。
たとえそうしたとしても彼はきっと後悔するから。