空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~

「お前は、まだそんなこと言ってるのか」



涙の向こうに見える祐輔の顔が、固かった。



「それが、大樹を盾にしているって言ってるんだよ」



整った顔が、刺すように真剣な目が、貫く様にあたしを見つめている。


本当に怒っているのかもしれない。


それでもあたしは、怯まずにその顔を正面から見返す。



「指輪、返して」



あたしは涙を拭いて、その手を祐輔に向かって差し出した。


たとえどんなに祐輔に怒られても。


だれになんと言われようとも、あたしの決意は変わらないんだ。



「だから返して。あたしと大樹の永遠を」



祐輔とあたしは、そのまましばらく見つめ合っていた。


お互いに一歩も動かず、視線もそらさず。


無言のまま、自分たちの意思を心に抱きながら。



やがて・・・・・・


やっと、祐輔の腕が動いた。


・・・・・・指輪、返してくれるの?


そう思って、祐輔の手に向けたあたしの手が、ギュッとつかまれた。


「祐輔?」

「佳那」


低い声で祐輔があたしの名前を呼ぶ。


そしてそのまま、あたしの体は壁に強く押し付けられてしまった。

< 159 / 244 >

この作品をシェア

pagetop