空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~
大樹によく似た面影の女の人が、お花をお供えしている。
あの頃よりも髪が短くなったけど、間違いない。
大樹のお母さんだ。
その場に立ち止まり、あたしは困惑した。
大樹とあたしが付き合っていたことは、結局ずっと秘密のままだったから。
悪い事をしていたとは思ってないけど、今さらやっぱり気が引ける。
それに・・・。
どうしよう。今あたしが行ったら邪魔だよね?
特別な時間を静かに過ごしたいだろうし。
お母さんが帰るまで、あたしはどこかで時間をつぶして・・・。
そう考えた途端、お母さんがこっちを振り向いた。
お互いの目がバッチリ合ってしまう。
うわ、気付かれちゃった。
とたんにお母さんの表情がパッと明るくなる。
「あら?」と意外なほど元気の良い声が聞こえてきた。
「もしかしたら、あなた大樹のお友だちかしら?」
「は、はい」
あたしは返事をしながら、ピンと背筋を伸ばして緊張した。
「大樹のお墓参りにきてくれたの?」
「はい」
「まあ、嬉しいわ。さ、どうぞどうぞ」
笑顔で手招きされてしまった・・・。
まさかこの状況で、「いえ、けっこうです」と言うわけにもいかない。
あたしはオズオズと近づいて行く。