空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~
全部この日のためだったんだ。
自分が、あたしの元から去って行く日のために。
『もう、限界なんだ』
もう自分は、あたしのそばであたしを見守ることができないから。
あたしの止まってしまった時間を、動かしたんだ。
あたしのためにできる・・・
これが、最後の事として・・・・・・。
「おい、奥村」
担任の呼び声が、あたしを現実に引き戻した。
あたしはハッとして顔を向ける。
「ちょっと来い」
あたしを見ながらそう言って、担任は教室から出て行く。
あたしは、まるで命令に従うロボットみたいに、無意識に立ち上がった。
そしてフラフラと廊下へ出て行く。
教室を出たすぐの場所で、担任はあたしを待っていた。
あたしは近寄って、締まり無く口をポカンと開け、担任を見上げる。
ひどく情けない、頼りない顔で。
「祐輔からな、預かった。お前にって」
担任が目の前で、右手をゆっくりと開く。
そこに、あたしが見た物は・・・・・・
大樹の、指輪だった。