空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~
大樹が逝った、あの日。
あの桜の中庭で。
あたしは、共に泣く祐輔の声を聞くことができなかった。
でも今、あたしの耳にハッキリと聞こえる。
由依の泣き声が聞こえてくる。
あたしを抱きしめる腕の強さを、由依の体温を、感じてる。
由依の存在を、確かに感じることができる。
最後に見た、祐輔の姿が目に浮かんだ。
背中を向けて、片手を振りながら、あたしから離れていった姿が。
張り裂けそうな苦しさを胸に抱えながら、あたしは一番大切な言葉を、心の中でつぶやいた。
伝えなければならないのに、伝わることのない、心からの言葉を。
ありがとう、祐輔。
サヨナラを言うのは、あまりに辛すぎるから。
だから今はせめて、ありがとうを言わせて。
ほら、あたしはこんなに大丈夫。
祐輔のおかげで、大丈夫だからね。
だから、ありがとう祐輔。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
何万回言っても足りないほど、ありがとう。
ありがとう、祐輔・・・・・・。
ありがとう・・・・・・。