空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~

そうして、時は流れていく。


いろんな出来事を飲み込みながら。


悲しくも穏やかに、切なくも素知らぬ顔で。


時はゆっくり過ぎていく。



あたしの背はまた、あれから少しだけ伸びた。


変わったもの、変わらないものを抱え、こうして毎日を過ごしている。



・・・あぁ、今日はすごく天気が良い。


空の青色が透き通るようにキレイに見える。


あのバス遠足の日の青空を思い出すな。


あの時は季節は秋で、木々は紅葉してたけど。


今は咲き誇る薄紅との対比が、なんともいえない絶景ね。


コンビニ帰りに遠回りして散歩しながら、こんな風に過ごす、ノンビリした時間が好き。



近所の公園の大きな桜の木も満開を迎えている。


その横を通り過ぎながら、ふと、桜の花に触れてみたいと思った。


頭上の花に、そっと手を伸ばす。



「また枝を折る気かよ? それはもうカンベンしてくれ」



・・・・・・・・・・・・!



聞き覚えのある声に、あたしの手が止まった。



「久しぶりだな」


「・・・・・・・・・・・・」


「元気だったか? 佳那」


「・・・・・・・・・・・・」


「お前、あんま変わってねえな。ひと目で分かった」


「・・・・・・・・・・・・」


「なに無視してんだよ? オレのこともう、忘れたか?」


「・・・・・・忘れるわけ、ないでしょ」


あたしは振り向き、万感の思いでその名を口にした。


「祐輔」

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