空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~
目の前に、祐輔がいた。
間違いない。間違えるはずもない。
やっぱり、あれから少し背も伸びて、肩幅も広くなって。
顔立ちも、ずいぶん大人びて。
それでもあたしが、こいつを間違えるはずがない。
この優しくて、穏やかで、どこかイタズラ好きな顔を。
ぜったいに間違えることはない。なにがあっても忘れない。
それこそ、永遠に。
「オレ、こっちの大学に入学したんだよ」
「そうなんだ」
「お前も地元の大学だったのか?」
「うん、短大に」
まるきり、普通の会話。
まるで昨日まで、毎日会っていたみたいに。
そうやって普通の顔を装いながら、懸命に自分を落ち着かせている。
あまりにも・・・胸がいっぱいで。
嬉しいのか、驚いているのか、自分でもわけが分からなくて気が遠くなりそう。
気を抜くと、目の前の祐輔が消えてしまうんじゃないだろうか。
煙のように儚く消えてしまったら、どうしよう。
それが怖くて、一歩も動けない。祐輔のそばに近づけない。
祐輔が去った時のように、今もまた、大事な言葉を言うことができない。
『会いたかった』 と、心からの言葉を。