空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~

脳裏によみがえる大樹との出会い、忘れ得ぬ笑顔。


涙や、告白や、交わしたキス。


別離と、散る花びらと、喪失の苦悩。


気が狂うほどに、憎んだ桜。



あの中庭の桜は、きっと今も咲いているのだろう。


あの霊園の桜も、咲き誇っているだろう。



・・・・・・美しいと、思う。


ただひたすらに咲く花を、あたしは美しいと思う。



胸元の指輪を、あたしは服の上から握りしめた。


大樹の声はもう、聞こえない。


それでもあたしは大丈夫だよ。


あの庭は無くなったけれど、ここにある。


生まれて、生きて、去って逝った命が、この胸の中にある。


今もあたしを支え続けてくれる、変わらぬ永遠の記憶が。



そうだよね・・・・・・大樹。



あたしは、空色の涙と桜の花びらを、指先で頬から払った。


祐輔の目を、微笑みながらしっかりと見返す。



そして祐輔に向かって一歩、踏み出した。



  (完)



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