空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~

そしてやっと入学式が済んで。


あたしは速攻で洗い場に向かい、石鹸で必死に手を洗いまくった。


「佳那ぁ、チョー目立ってたよ!」


「入学式の日に、一発で全校に顔が知れ渡ったね。おめでとー!」


一緒に洗い場に付き合ってくれた友人たちが、ケラケラ笑ってる。


古代人の火おこしみたいに、必死に両手をこすりながらあたしは泣きベソ声を出した。


「笑いごとじゃないもん。うぅ、水が冷たい」


「早く教室に戻んないと、先生が来ちゃうよ?」


「分かってるよぉ」


摩擦熱で煙が出るんじゃないかって思った頃に、ようやく血は完全に落ちてくれた。


ホッとしながら、みんなで四階の教室に急いで戻る。


そしてあたしは、自分の隣が空席な事に気が付いた。


・・・・・・きっと彼だ。


ふうん、あの鼻血くん、あたしの隣の席なのか。


偶然だなぁ。巡り合わせってやつ?


まだ見慣れない教室の中で、隣の空白はなんだかとても寂しく思える。


あたしは静かに、出席番号と名前が書かれた紙が貼りつけてある自分の机に座った。


机の色もイスの座り心地も、まだ全然しっくりこない。

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