空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~

ネックレスに通して胸元に下げている指輪を、制服の上から触る。


その感触も、なにもかもが心細かった。

そして・・・・・・。


『大樹が死んだ』


その言葉だけが、頭の中を空回りし続けた。


言葉の意味は分かる。でもどうしても理解ができない。


大樹が死んだという言葉を理解することが、どうしてもできない。


あたしの足はフラフラと学校の中庭へ向かっていた。


中庭では、桜が咲いている。


大樹と出会ったあの日、入学式に咲いていた、あの桜。


枝を張り、天に伸び、圧倒的なまでに美しく。


幹の黒色と花の薄紅色を見せつけている。



大樹が見逃した桜。


今年こそは見たいと言っていた桜。


一緒に見ようと約束した桜。


あたしの目に、突き刺さるほど薄紅が強烈に映る。


覆いかぶさり、襲いかかってくるような・・・・・・


桜  桜  桜  桜・・・・・・。



あぁ、それは。


あの約束は。


二度と、叶わない。


叶わないんだ。



あたしは桜の木を見上げながら。


大樹が死んだという事実を、唐突に理解した。

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