空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~
「佳那!? お前、なにやってんだ!」
背後から祐輔の声が聞こえた。
それでも振り向かず、あたしは桜の枝に飛びつく。
祐輔があたしの両手を、枝から強引に引き離した。
「佳那、もうやめろ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「よせって! お前、分かってんのか!? 自分の手を見てみろ!」
見れば、あたしの両手は血だらけだった。
枝を折っている時に切れたんだろう。
赤く染まった自分の手を、じっと見る。
そして、記憶がよみがえる。
大樹と初めて出会った時。
あの時、あたしの両手は大樹の赤い血に染まっていた。
鮮烈な赤は、大樹の記憶と結びついている。
いつも、いつも、いつも。
あの日も、そうだった。
大樹に、想いを告げられた日も。
・・・・・・大樹。
白い肌。子どものように柔らかい髪。
小柄な体に、丸い大きな瞳。
輝くような笑顔。温かくて優しい心。
そのすべてが、あたしに向けられていた。
あの、かけがえのない、すべてが。