空色涙 ~キミと、永遠と、桜を想う~

『入学式ではありがとう。迷惑かけてゴメンね』



初めて見た、輝く笑顔。


見た瞬間に胸がドキンと鳴ったのを、今でも覚えている。



『だからね、これからボクのお世話係、よろしく!』



驚くあたしの顔を見る、楽しそうな大樹の表情。


大樹のイタズラに、よくあたしは笑わされた。


あたしの笑い顔を見ると大樹は、それ以上に嬉しそうな顔をして笑った。


たぶんあのイタズラは全部、ワザとやっていたんだろう。


あたしを笑顔にするために。


そうやって、大樹はいつも人を笑顔にさせるくせに・・・・・・



『佳那のことが好きだよ。もうずっと前から』



なのに彼自身は、あのとき泣いていた。


赤い血にまみれて、泣いていたんだ。



笑顔も、イタズラも、苦しむ姿も、涙も。


大樹はすべてをあたしに見せて、与えてくれた。


この手の中に、確かに大樹が、あった。



なのに・・・・・・なのに・・・・・・。



『こんなボクが佳那を好きになっちゃって・・・・・・ごめんよ・・・・・・』



手の平の血と、大樹の姿が重なる。


大樹の声が聞こえる。


『ごめんよ・・・・・・佳那』

< 63 / 244 >

この作品をシェア

pagetop