人魚と恋
そのあとは、また何人かで話して、あっという間に帰る時間になった。
よしみんと司路くんは早々に連絡先を交換し終えてまた楽しそうに話してた。
実希や莉紗は男の子2人と楽しそうにドラマの話をしている。私はそのドラマを見ていないから話に加わらず微妙な距離を歩いていた。でもみんなから孤立して寂しいとかは感じなかった。また隣に航くんがいたから。
「航くんはあのドラマ見てないのー?」
自分も見てないのに、そんな質問をした。
「そうなんですよね、
ゆうちゃんさんもですか?」
そうなんだよーと答える。
合コンの自己紹介で、私は嫌いな自分の名前を言わなかった。ゆうちゃんて呼んでくださいって言ったから、航くんは私のことをゆうちゃんさんと呼ぶ。
「ゆうちゃんさんは変だからゆうちゃんって呼んで欲しいなあ〜」
恥ずかしさから少し上に視線をずらしながら言ってみる。
でもはっと我に帰り、付け足す。
「あ、まあ、もう呼ばれる機会なさそうだけどさー」
私が付けたした言葉を聞くと航くんは私の方をじっと見た。私は恥ずかしくてそっちの方を向けない。いつも何人もの男子高校生と向き合っていて何が恥ずかしいのかと我ながら思うけど、どうしても恥ずかしい。
「あの、また会えませんか。
あと、連絡先、交換したいです。
だめですか?」
私は断ろうと思い、流石に断る時は面と向かねばと思い彼の方を見た。
彼の顔は暗い道でも分かるほど赤くなっていた。あのカラオケで話した時は暑いからかと思ったけど…
彼の顔が何故赤いかを考えようとすると爆発しそうなほど恥ずかしくて考えるのをやめた。
「ご、ごごめんね、あの、私、そんなに仲良くない男の人と交換、あんまり、したくなくて、それで」
本当は教師だから、あんまり学生に連絡先を広めたくないという理由だったけど、そんなこと言えるはずもなく、しどろもどろになりながら口から嘘を吐いた。
「分かりました。
困らせちゃってごめんなさい。
それじゃあ」
彼は俯きながら足早に去っていった。
その後ろ姿を見ながら、さっき連絡先の交換を断っておきながら、私は偶然また会えないかなと願っていた。