人魚と恋


「ま…もう…」

後ろから晶の息の切れた声がした。
思い切って晶の方を見る。どうやらもう追いかけられてはいないようだった。おれはゆっくり止まった途端、晶は草の中に倒れこんで息苦しそうにしてる。その時気が付いたが、いつの間にかおれは晶の学校から少し離れた河原まで走ってきたようだ。

「もう大丈夫なのに、てか、追いかけて来なかったのに、走りすぎなんだよ、司路は」

苦しそうに、切れ切れに言う晶。
おれは晶の顔を見ながら雑に謝る。

「悪い悪い。
捕まったらヤバかったしビビっからさ」

「…あの人、合コン来てた人だよな。」

晶は大の字になり、空を仰ぎながらこぼした。

「ああ…そうだな。」

おれは、好きな人に自分が高校生だとバレることを考えた後、航のことを考えた。

「おいっ緊急会議だ」

いきなり大声を出したおれに晶は驚きながらどうしてと聞いた。

「もちろん、あの人のことでだよ。
航に教えてやらなきゃな、そんでいろいろ確認しねーと」

あーあーとだらしない声を出しながら晶は上半身だけ起き上がり、足を投げ出した。あいつ、あの人に惚れたくさかったもんな。晶の言葉を苦々しく思いながら、ああ、とだけ返事して航の携帯に電話をかけた。
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