人魚と恋


お菓子売り場には私服の男性が1人いた。幸い制服の人はいない。それを確認するとさっとお菓子の並ぶ棚の前に立ち今日食べるお菓子を選び始めた。

久しぶりのお菓子はどれも魅力的に見えて悩んでしまう。今日は甘いのが食べたいかも。そう思ってお気に入りのチョコのお菓子を取ろうとしたとき、私服の男性の方からあっと漏れたような声がした。生徒か!?そう思って伸ばした手を静かに、動揺を隠しながらおろし、微笑みながら男性の方を見てみる。

そこには生徒ではないが、生徒よりも驚きの人がいた。合コンで一緒だった航くんだ。

航くんは恥ずかしそうに少し顔を赤くしながら

「こんにちは、あ、お菓子、なんだか食べたくなる時ありますよね」

と言った。とても気まずそうだった。私もお菓子を買いに来た1人なのにそこまで恥ずかしそうにされるとこちらもだんだん恥ずかしくなってくる。

「あ、そうだよね〜
というか久しぶり?かな?
家近いの〜?」

私は早口で話しかけた。
彼は少しびっくりした顔をして家は少し遠いです、と答えた。ここに寄ったのは偶然のようで安心した。そっか〜と私は言ったあと、ふと彼の友人たちを思い出した。制服を着て、明らかに高校生といういでたちで私から走り逃げて行った2人。あの2人にこれから会うんだろうか?それに、彼も、航くんも、高校生なのか…?
私は少し遠慮がちに聞いて見た。

「もしかして、これから…合コン来てた友だちと会ったり、するの?」

彼の方をそっと見つめてみる。本当は聞くまでもないことだ。だって、タイミングが良すぎる。でも、本人に聞いたかった。

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