人魚と恋
おれは驚いたし、慌てた。
「え!?
うそ…そんな広まってんの?」
「あ、そういうんじゃないよ!
いや、ただその、なんていうか、最近、様子違うし、何と無くそうかなーと思ったんだよね。」
「あ、よかった〜」
ははは、と力なく、意味もなく笑ってみたけど、如月さんはニコリともしない。
それに黙り込んでしまった。
話題、話題、と思って、とりあえず適当な思いついた話題をふる。
「あ、司路にも言われたんだけどさ、
周りから見て最近のおれってそんなに変、ってほど変?」
「あ、えっと、そんなにではないよ!
司路くんが気付いたのはいっつも一緒だからだろうし…
わた、わたしが気が付いたのは、航くんのこと、好きで、よく、目で、追ってたから、だと思う、し…」
流石にそこまで聞いたらおれも顔が赤くなってきた。素直に嬉しい。でも…
「あの…さー…
おれ、さっきも言ったけど好きな人が」
「お願い!」
如月しんからさっきまでの消え入るような声からは想像も出来ないくらい大声が発せられた。
「一回、私とのことも、ちゃんと考えみて欲しいの。
そ、その人、と、付き合うまででも、暇つぶしでも良い…
付き合ってくれたら、私、航くんに良いって思ってもらえるよう、頑張るし。
だから、お願いします…
一回、考えてみてくれないかな…?」
如月さんは泣きそうな声で必死に言ってくれた。おれは圧倒されて、うん…と小さな声で答えるのが精一杯だった。
如月さんはおれの返事を聞くと、ありがとう!と言って、走ってった。
おれは仕方ないから、とりあえず司路の待つ教室へ向かって歩き出した。