人魚と恋
出会い
航-わたる-
「わたるー」
高校に入学しても、中学からの友だちは全く変わらなかった。相変わらず、おれを呼んでは好きな人の話をする。
おれの友人、永原司路(ながはら つかじ)の今の好きな人は駅で司路がよく会うOLだった。
「今日もよしみさん見ちゃったよ〜やっぱり綺麗だったよ〜あーまた話してぇっどうしたら良いかな?」
よしみさんというのはそのOLさんの名前でよしみさんの友人らしき人がその人によしみって呼びかけていたのを聞いて知ったらしい。
よしみさんとこいつは入学間近に駅で知り合った。知り合ったと言っても、こいつが情けないことにカバンひっくり返して慌てて中拾ってたら手伝ってもらったらしい。
「前は情けない格好だったからな〜
今度話す時は挽回したいんだよな!!」
そう言って毎日の様にその人を見かけてはいるが…勇気が出ず見るだけで終わる日々だ。
「どうするもこうするも、
どうせ勇気なくて話せねーだろ
もうちょい現実的なやつ好きになれば良いのにな〜」
そういうおれは今まで誰かと付き合ったり、ましてや誰かを好きになったことはない。良いなーて子はいたけど好きってほどじゃなかった。
「くそ〜…
…分かったよ!現実的な恋のお相手、2人で見つけようぜ!」