人魚と恋


次の朝、
おれは自転車を持って自分の家をだいぶ早めに出た。
そんで、司路の家に行った。

迷惑だとは思いつつもインターホンを押す。おばさんが出た。
それから10分くらい経って、ボサボサ頭のジャージを着た司路が出てきた。
はじめは昨日おれらが喧嘩したこと忘れてて、あれ、今日約束してたっけ、なんて言うから、昨日の、帰りのことで来たって言った。
そしたらやっと目が覚めたみたいで、いきなりぶすくれた顔をしておれにずっけんどんになんだよ、と言った。

「おれ、お前があんな心配してくれてたのにちょっと言い過ぎたし、なんつーか酷かったと思う、ごめん。
あと、その、ありがと。いろいろ。」

司路はへへへってだらしなく笑った後、

「おれも強く言い過ぎた。ごめん。
これあんま言うなって言われてんだけどさ、おれの姉ちゃんが、そういう恋愛して苦しんだの、見たからさ。つい熱くなっちまった。ほんとごめんな。」

と謝ってくれた。
司路の家は6人兄弟で、司路は4番目、上には兄、姉、姉となっていて、下には弟、妹、と大家族だ。
司路はおれの自転車を見て首を傾げていたから、おれは自転車を持ってきた理由を教えた。

「今日、またスーパーに行こうと思ってさ。
あ、でも、今日で、スーパーに行くのは最後にするよ。本当に最後。
自分に区切りつけるために行く。」

司路はうんうん頷いて

「良いと思う」

って言った。
そのあとは2人で学校に行った。そんで午前の授業受けて、昼頃ー


ーお昼を食べる時に、空には雨雲が立ち込めていた。

「おい、この天気じゃ自転車は辛くないか?」

司路が何度も空を見ては心配してる。
その度におれは

「大丈夫だって。つかもう今日はどんな天気でも行くって決めたから。」

と言った。





そして、放課後になった。
幸い学校を出る時は雨は降ってなかった。おれは司路に送り出されて、スーパーへと漕ぎ出した。

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