人魚と恋


学校を出て5分もしたら雨が降り始めた。それも結構な量だ。

だからスーパーに着いた時にはおれはもうずぶ濡れでスーパーの中に入れるような格好じゃなかった。

仕方なく、おれはスーパーの屋根のある端のところに自転車を止め、入り口や、スーパーに来る客、出てくる客を眺めた。どのくらい待とうかな。そう思って目を瞑った。おれにしては一瞬だったけど、目を開けると時間は2時間くらい進んでた。
ヤバい、寝てた。
濡れた体はすっかり冷え込み、自転車も冷たく感じる。流石にもう帰るか。
おれは自転車を雨の中漕ぎ出した。でも少しだけ進んだ後、今日が最後だということを思い出して、もう少しだけ、待ってみようと、また屋根のある端のところまで戻った。
自転車を止めて、一息ついた時、

「何してるの…!」

ゆうさんの声がした。声のした方を見るとゆうさんがいる。おれに向かって歩いてくる。

「こんなにびしょ濡れで!
風邪引いちゃうよ!?」

もう、と言いながらハンカチでせっせとおれの体を拭く。
拭いてくれるのは嬉しいけど、どうしても聞いて欲しいことがある。

「ゆうさん。
おれ…実は、まだ高校生なんです。
それでも…相手してもらえませんか。」

本当は顔を見て言おうと思ってたのに、俯いてしまった。
ゆうさんのため息が聞こえる。ゆうさんは傘をさした。おれは顔を上げてゆうさんを見る。

「とにかくそのままじゃ風邪引くから!
うち近くだからおいで。
ほらほら、傘小さいけど入って入って」

おれは言われるがままにゆうさんの傘に入り、ゆうさんと、ゆうさんの家へ向かった。


ゆうさんの家は近くのマンションだった。おれは自転車を駐輪場に止めさせてもらって、部屋まであがらせてもらうことになった。

家に上がると、玄関の近くに風呂場があった。ゆうさんに荷物を没収され、代わりに近くにあった袋とタオルを渡され、

「濡れた服は自分で絞ってその袋に入れなさい。タオルは渡したの使ってね。
着替えは適当に探して置いておくから」

と風呂場に送り出された。
だからおれは言われた通り服を絞り、袋に入れ、風呂に入った。
お湯は、家ついた瞬間にゆうさんが入れ始めてくれて、まだ満タンとはいかなかったけど、真ん中より下くらいまで入ってた。
とりあえずゆっくりさせてもらうことにした。

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