人魚と恋
お風呂からあがると、コンビニで買ったらしき下着と、ゆうさんのらしきジャージが置いてあった。
それを着て、リビングに行く。
ゆうさんがリビングの横のキッチンに立っていた。
「あの!
お風呂、ありがとうございました!
凄くあったまりました!」
おれは深く頭を下げた。
「あはは、じゃあ次はそこのミニソファーに座って待っててくれる?」
はい!と返事をして、言われたソファーに座る。次は何が起きるんだろう。
なんとなく居場所がなくて、どこを見たらいいかも変わらなかったからとりあえず壁に飾ってある海の絵の入った額を眺めた。
5分も経たないうちに、ゆうさんがホットミルクを持ってきてくれた。
「甘いの平気?あと牛乳、平気?
だめならこっちの紅茶とかにする?」
「甘いのも牛乳も大丈夫です!」
ゆうさんからホットミルクのカップを受け取る。
それは甘くて、あったかくて、体を芯からあっためてくれるようだった。
「あったまる時はやっぱりホットミルクかなーと思ってね。」
ふふっといたずらっぽくゆうさんは笑った。おれはすごく好きだな、と思ったけど、黙ってホットミルクを啜った。
ゆうさんが口を開く。
「航くんはさー…
私とまだ3回しか会ってないのに凄く頑張ってくれるよね。
なんで私が良いの?」
「それは…
ゆうさんのことが、凄く好きだなと、思うからです。
なんでかは分からないですけど…
凄く、好き、なんです…」
ああ、また…
おれは消えいるような声しか出なかった。想いよ、少しは伝わってくれ!と願いながらカップをぎゅっと掴んだ。
「そうなんだぁー…
私のために、そんなに必死になってくれた人は今までいなかったよ。」
「お、おれも!
こんなに人を好きになったことはありませんでした。
本当です。」
ふふっとまたいたずらっぽくゆうさんは笑う。
「そうなんだ。うん。
そっかぁー…」
ゆうさんは少し遠くを見た後、
「私、今はまだ、悩んでるの。
だから、もう少し、考えさせてもらっても良いかな?」
おれは飛び付いた。
「もちろんです!
ゆうさんの気持ちが固まるまで待ちます!アピールします!よろしくお願いします!!」
あはははは、と今度は無邪気に笑うゆうさん。
「航くん面白いなあ。
うん、楽しみにしてるねっ。」
自分の顔が赤くなったのを感じた。
そのあと、どうやって家まで帰ったのか、詳しく覚えてない。気が付いたらもう自分の部屋だった気がする。
あ、でも大切なことは覚えてた。
ゆうさんの家とゆうさんの連絡先だ。
その日の夜は、
これからはアピールもっとするぞ〜
と浮かれまくって、はしゃぎまくった後、落ちるように寝た。