人魚と恋
雨の中
航くんとスーパーで会ってから、私はスーパーに近寄らないようにしていた。
航くんに会わないように。
彼は自転車で来ているのが分かったから、極力、雨の日に行くようにした。
そうして、無事、3ヶ月近く会わずにすんだ。
晶くんの方は、やっぱり1年生だったようで、1年生の廊下でたまに見かけるけど、これと言って関わりはなく、いたって平和に日々を送れていた。
そんなある雨の日。
今日は雨だからスーパーだな、と思った。普通雨の日は荷物増やしたくないけど仕方ないよな〜とか思いながら、荷物を片付ける。
雨の中ついたスーパーはいつものように少し空いてて、ゆっくり買い物できた。
買い物が終わって、さて帰るか、という時に、スーパーの端にずぶ濡れで自転車を止めている人が見えた。
こんな雨の日に自転車なんて、ガッツあるな〜
そう思ってさっさと出ようとしたが、ふと動きが止まる。
あの自転車に乗ってた人、航くんに似てなかったかな?というか、来た時から止まってたような…
あんなにずぶ濡れになりながら、私のこと待ってたの?
本当に、気が付いたら声をかけていた。
そして、ずぶ濡れで申し訳なさそうに頭を下げる様子を見て、家に誘ってしまった。
彼がお風呂に入ってる間にコンビニに行き、彼の替えの下着を買いながら、
私なにしてるんだろう
と思った。
でも、彼がお風呂から上がってきて、美味しそうにホットミルクを飲んでるのを見てうっかり愛おしく感じてしまった。
本当は、彼が高校生と分かった時点で断るつもりだったのに、「迷ってる」なんて…
彼にひどいことを言ってしまった。
でも、彼が、自分を諦めないでいてくれて凄く嬉しい。
私は、彼のこと本当はどう思ってるんだろう…
…自分で自分の気持ちが分からなくなった。
私は片付けようと思って掴んだ、まだ温もりの残るホットミルクのカップをぎゅっと掴んでた。