人魚と恋
アピール=夕飯=
スーパーで
あれからスーパーに毎日のように行って、ゆうさんと買い物をする。
と言っても、ゆうさんは食材、おれは弁当、と買うものは違って、いつもゆうさんが食材を買う横にくっついて行って、最後に弁当コーナーでおれはささっと弁当を選んで終わりという感じ。
時間がかかっても絶対1時間はいかない短い時間だけど、ゆうさんに会えるだけでおれは幸せだから文句はなかった。
たしかに欲を言えばもっとゆっくり会っておしゃべりしたりしたいけど…
「航くんは自分で料理とかはしないの?」
いつも通り、ゆうさんの食材選びにくっつきながらその日の料理やらその作り方を教えてもらってる途中に聞かれた。
「え…
あ、おれは…あんまりしないです。」
「そうかあ〜
よくテレビで今時の男の人が料理してたりするから最近の人はできるのかなとか考えてたよ〜
あ、じゃあいつもの私のこれこれ作るとか、そういう作り方つまんなかったね!
ごめんね〜」
「いえっ
あ、えと、あのですね、作りたいんですけど親がそういうの教えてくれる余裕ないからできないんですよね!
だから教えて欲しいです!」
できないのを親のせいにしてでもゆうさんの夕飯の料理トークが聞きたかった。
「へぇ〜…いいけど、
本当にやる人はお母さんお父さんに教えてもらわなくてもどうにかしてやってると思うよ?」
痛いところをつかれる。
「そう、ですね。
あははは」
魚を選びながらゆうさんは独り言のように言った。
「いやーテレビの影響かやっぱ料理できる男子とかいいよね〜
それに家に帰ったらできたての美味しい夕飯が置いてあるとか…いいわあ」
それを聞いたおれに雷が落ちた。これは、早急に料理を勉強せねばならない。
その日はそのあと弁当を買って、ゆうさんとわかれたあと、本屋に飛んで行き、おれでもなんとか作れそうな料理の乗ってる料理本を探した。
そしてめぼしいのを2、3冊選び、その中で1番簡単そうで安いやつを買った。
それからは毎朝、その本を見ながらせっせと料理の練習をした。
でもなんとなくちゃんとできるようになるまでゆうさんには言いたくなくて、夜は何事もなかったかのようにいつも通り弁当を買った。
練習を繰り返して約2ヶ月。
最初に目星を付けたけど買わなかった一冊とはじめは無理だと思っていたやつ一冊、初めに買ったやつの計3冊の料理はたいていそれなりに美味しく作れるようになった、と思う。全部一人で作って味見してだから最後の方は分からなくなってきたけど、弁当にいれて持ってって、司路にも食べてもらったりしながら美味しくなるよう努力した。
自分で満足した日の放課後、
スーパーでゆうさんを待った。少ししたらゆうさんが来て、やっぱりいつも通り食材売り場に行った。