人魚と恋


「違うんです、今日は食材買おうと思って…。」



かごを持ってきた航くんはそう言った。
正直、かごを持ってきた時は料理の話を前したのなんてすっかり忘れていた。けど、この言葉を聞いて、あっと思った。
とうとう料理の練習はじめちゃうかも。
いやいや、でも時間経ってるし、違う理由かも…


「これからの自分のためにもなると思うし」

あ、そうだよね、料理は1人暮らしとかしたら大切だよね。

「ゆうさんに美味しい夕飯いつか作って食べてもらいたいんで、それに…」

えっんん?
たしかに私は美味しい夕飯作ってくれる人素敵だと思うけど…

「料理のできる男ってことで、ゆうさんに少しでも好かれたいんで…」

照れた。照れて、照れて、私はありがとうも言わないで話そらしちゃった。

帰り道、

「おれ2ヶ月くらい練習したんで、
結構、いや、それなりに料理上手くなりましたよ。
だから、あ〜…
よかったら!いつでも!飯作るんで、言ってくださいっ
な、なんなら今日明日でもおれは大丈夫です!」

もう、料理の練習してたんだ…。それって、わたしのために…?

私の中で変化が起きてた。
わたしの『せい』が『ために』
『男の子』が、『男の人』になってた。

もしかしたら、私の中では彼ははじめっから『男の人』だったのかもしれない…

そんなことを思いながら、布団に潜ってきゅんきゅんしてた。
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