人魚と恋
私がラッピングの箱に魅入ってると、航くんが私の持つコンビニの袋を見る。
「あ、ごめん…
もしかして甘いもの買っちゃった?」
「あ、でも私甘いもの大好きだからいくらでも食べられるし!
それにそれに、航くんのくれたものの方が、売ってるやつよりずっと元気になれるから!
本当にありがとう!」
気を利かせてくれるできた航くんにあきられたくなくて、慌てて言う。
本当の気持ちだった、けど、慌てて言ったせいで嘘っぽく聞こえたかな…?
でも、今から本当だよ、とか言うとますます嘘っぽい…?
付き合った途端に、自分が前はどんなだったか、どんな風に航くんと話してたか分からなくなって、変に気を使っちゃって、何も言えなくなり、下を向いた。
航くんも黙っちゃった…
何か言わなきゃ、と思って航くんの方を見て話しかけようとしたところで、航くんに頭を撫でられた。
わたしがびっくりして照れてると航くんは撫でていた手を止めて私の両肩を軽く持って、私と向き合った。
「ゆうさん、そんなに固まらないで。
ちゃんと喜んでくれてるのは、渡した時のゆうさんの顔で充分伝わってるし、疲れてるんだから俺にくらい変な気遣わないでよ。
おれが年下で頼りないかもしんないけど…ま、さっきのゆうさんはおれが年上みたいだったけどね!」
最後の言葉は、またいつもみたいにいたずらっぽく笑いながら言った。
私もふふっと笑って
「生意気だな〜
あたしは大人だぞー?もー
でも、これは、本当にありがと…」
下手に大人っぽく言いたくなって、最後は箱を指したながら言ってたら、なんとなく、愛されてる感じがして、照れて、声がまた小さくなる。
航くんはあーまた照れてるーと私を笑う。
そのあと少しお互いの近況を話して、夜も遅いからって帰ることにした。
「送んなくて本当に大丈夫〜?
遅いよ?暗いよ?危ないよ?」
「あのですねー僕こう見えて男の子なんでー大丈夫なんですー
もう、心配性だなあ、ゆうさんは
送ってもらったらゆうさんの帰りが心配になっちゃうから、じゃ。帰りまーす」
航くんはそう言ってさっと振り返って軽く手を振りながらマンションを出て行った。
少しくらい振り向いたり、ギリギリまでこっち向いたり、しないかなー…
と思いながらマンションの外ギリギリまで見送ったけど、結局、航くんは振り返らなかった。
仕方ないから自分の部屋へ向かう。
向かいながら、航くんからもらった箱を見て、これ買う時、恥ずかしかったかな、とか、それでも買ってきてくれたんだ、と思って、少し元気になって部屋に入った。