人魚と恋
ゆうさんの噛み合わない会話に違和感を覚えながら、こっそりと2人で帰った。
ゆうさんの顔からはさっきのような妖しさは消えたけどなんとなくいつもと違った。
「ゆうさん…なんかありました…?」
ゆうさんは俺の方を見た後、足元を見る。
俺もつられてゆうさんの足元を見るがそこには普通の道路と黒い影しかなかった。ゆうさんが何を見ているか分からず困惑していると、手に温もりを感じて手を見る。
ゆうさんが俺の手をしっかりと握っていた。
「ゆ、ゆうさん」
照れて名前を呼ぶことしかできないおれにゆうさんは優しく笑いかけて、今だけ、と言った。
周りに生徒らしき人は見えないが、油断はできない。しかし、ゆうさんがここまで言うのは何か理由があるんだろうと思って拒むことはできなかった。
おれにはこんなことしかできないけど、この手から少しでも俺の元気がゆうさんに伝わっていったらいいのにってずっと思った。
ゆうさんのマンションの少し手前でわかれようとした。けど、ゆうさんが手を離さなかったからおれはゆうさんに半ば引きずられるようにして結局ゆうさんの部屋まで行ってしまった。