人魚と恋
「ま、まさか、その妹が、君?
姉が…」
妹さんは首を横に振った。
「半分あたりで半分正解。
妹のいじめはどんどんエスカレートしていったの。
ひどい陰口を言われたりもした。お姉さんの方が美人なのになんでゆう美なの、とか。名前なんて、自分でつけたわけでもないのにね。
それでも妹はなんとか耐えていたんだけど、姉の方が傷付いちゃってね。
変な話だよね、見てる方がいじめられてる人より傷付くなんて。
姉は責任をすごく感じちゃって、思い詰めた後に○○の海に身投げしちゃって、行方不明になっちゃった。」
妹さんはすごく辛そうな顔をしながら、絞り出すような声で続けた。
「妹も、姉が大好きで、妹にとって姉は本当に輝きで、救いだったのが壊れちゃって。
姉がそうなったのをきっかけに、両親は離婚、妹へのいじめは少し収まったけど妹の精神は崩壊しちゃって、なんとか姉を探す方法を探したの。
でもそんなのはもちろん見つかるわけなくて、気が付けば、妹が、姉に成り代わろうとしてた。
自分は姉で、姉がいるから妹は大丈夫って。
架空の妹を想像してね。
ここまで話したら、もう分かった?」
おれは一瞬言葉が出なかった。
喉の奥から考えがまとまらないまま音を発する。
「君は、想像のゆうさん?」
「ゆうさんて言われると違和感なんだけど…
そうだなあ。
想像の、高校生で成長が止まった妹さん、かな。」
「おれは、どうして見えてるの?
君は、ゆうさんが作り出した想像なのになんで…」
クスクスと笑う妹に対して、おれの最後の声は小さく震えてた。
「なんでだろうね」
妹はにっこり笑って、黒板に近付いた。
黒板に近づくと、さんに残ってるチョークを掴んで黒板に何か書き始めた。
妹が書き始めるのを見た俺は慌てて教室を出ようと、立ち上がりドアに向かって走った。妹は振り返らない。ここから逃げようとした時、椅子につまづいて派手に転んだ。
転ぶのなんていつぶりだろう。
痛む頬を抑えて起き上がった。