金木犀のアリア
2話/アラン
演奏の後――時々、指が強張ることがあるな。
……それに震えが収まるのが遅い。
詩月は指を広げ、曲げ伸ばしをしてみる。
「っ……つ」
指先から手首に向かって走る痛みに、思わず声を漏らす。
手にしていた、楽譜がはらはらと床に散乱し、詩月は膝をつき楽譜をかき集めた。
……この痛み!!
――詩月、それでは指を傷めてしまうわよ。
運指法をきちんと守って弾きなさい。
リリィの言葉が思い出された。
練習が終わるたび、教則本を開き細かく丁寧に、運指法を説いたリリィの顔。
優しい微笑みの内に秘めた元師匠の心配。
大丈夫だ。
詩月は、どこかで自分だけは、そんな痛みや心配とは無縁だと軽々しく思っていた。
……それに震えが収まるのが遅い。
詩月は指を広げ、曲げ伸ばしをしてみる。
「っ……つ」
指先から手首に向かって走る痛みに、思わず声を漏らす。
手にしていた、楽譜がはらはらと床に散乱し、詩月は膝をつき楽譜をかき集めた。
……この痛み!!
――詩月、それでは指を傷めてしまうわよ。
運指法をきちんと守って弾きなさい。
リリィの言葉が思い出された。
練習が終わるたび、教則本を開き細かく丁寧に、運指法を説いたリリィの顔。
優しい微笑みの内に秘めた元師匠の心配。
大丈夫だ。
詩月は、どこかで自分だけは、そんな痛みや心配とは無縁だと軽々しく思っていた。