金木犀のアリア
大学受験の合格通知は数日前、詩月の元に届いた。



ピアノもヴァイオリンもトラブル続きで、詩月は不安だったが何とか合格し、ホッとしたのは事実。



 詩月が高校で師事しているヴァイオリン教授は、鉄面皮みたいに無表情で、冷たく厳しい物言いをするので有名で、学生にはあまり好かれていない。


なのに教え方はピカイチなのか、彼を師事している学生には、コンクール入賞者が多い。


演奏家として活躍している卒業生も多数いる。



「……すみません」



「夏に入院していたようだが、体調はどうなんだ!?」


「大丈夫です」



無難な返事だなと、詩月は思う。



教授は、苦虫を噛み潰したように顔をしかめて言う。


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