金木犀のアリア
「そう言えば……お前、文化祭にショパンを弾くんだってな」



歩きながら、安坂が詩月に訊ねる。



「まあ、客寄せパンダですよ。

けれど、そうは言わせない演奏をしたいです」



「お前は、よく巻き込まれるタイプだな」



「ですね。コンクールの後で良かった。

でなきゃ、ゆっくり練習もできない」



詩月は苦笑する。



「でも、あの猫がリリィさんとあの准教授と繋がっていたなんて、ビックリ」



「だな、あの猫。

主人にリリィの祈りを伝えるために来ているのかもな」



詩月は、ちらと安坂の顔を見る。


まさか安坂の口から、そんな言葉を聞くとは思わなかったという顔だ。



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