金木犀のアリア
4話/回想②
病室を訪ねてきた彼女は、彼の左腕を見るなり、涙ぐんだ。
事故から1週間後だった。
「彼は……どうだった?」
凍ったような表情で彼は尋ねた。
「優勝したのよ、あの子。『ショパンの雨だれ』を弾いて」
「そう、良かった」
「これからが、大変かもしれないけれど……」
「あの子なら大丈夫だ。君の教え子だ」
「貴方は?」
「……」
彼女は、黙りこんだ彼に明るい声で言った。
「もう1度、貴方と『懐かしい土地の思い出』を弾きたいわ」
彼女は、満面の笑顔を称えて彼の手をさすった。
「傷が癒えたら、一緒に練習をしましょうよ」
「そう……だな」
彼は、ギブスで固定された指をまじまじと見つめながら、医師から言われた言葉を思い出した。
事故から1週間後だった。
「彼は……どうだった?」
凍ったような表情で彼は尋ねた。
「優勝したのよ、あの子。『ショパンの雨だれ』を弾いて」
「そう、良かった」
「これからが、大変かもしれないけれど……」
「あの子なら大丈夫だ。君の教え子だ」
「貴方は?」
「……」
彼女は、黙りこんだ彼に明るい声で言った。
「もう1度、貴方と『懐かしい土地の思い出』を弾きたいわ」
彼女は、満面の笑顔を称えて彼の手をさすった。
「傷が癒えたら、一緒に練習をしましょうよ」
「そう……だな」
彼は、ギブスで固定された指をまじまじと見つめながら、医師から言われた言葉を思い出した。