金木犀のアリア
「まだ……吹っ切れていないんだな」
理久がポツリ呟く。
「そうだな、それに腱鞘炎のことも彼には、かなりショックだったんだろうし」
「おふくろさんを見ていて、腱鞘炎を悪化させたらどうなるか、じゅうぶん知っているからな」
「郁には言うなと口止めされたよ。
郁は泣き虫だからな」
「ちっ、鈍いな」
「えっ!?」
「好きだからだろ」
「そう……なのか?」
「見ててわかるだろうに。
でなきゃ転入当初、暗かった奴が、あんなに変わるわけないだろ」
「あ……」
安坂は何かを思い出したように声をあげた。
「親父さんと比較され、自分の演奏に悩んで弾けなくなってた『ショバン』をさ、学長命令とは言え文化祭で、弾く気になったんだぜ。以前のあいつなら拒否してるはずだ」
理久がポツリ呟く。
「そうだな、それに腱鞘炎のことも彼には、かなりショックだったんだろうし」
「おふくろさんを見ていて、腱鞘炎を悪化させたらどうなるか、じゅうぶん知っているからな」
「郁には言うなと口止めされたよ。
郁は泣き虫だからな」
「ちっ、鈍いな」
「えっ!?」
「好きだからだろ」
「そう……なのか?」
「見ててわかるだろうに。
でなきゃ転入当初、暗かった奴が、あんなに変わるわけないだろ」
「あ……」
安坂は何かを思い出したように声をあげた。
「親父さんと比較され、自分の演奏に悩んで弾けなくなってた『ショバン』をさ、学長命令とは言え文化祭で、弾く気になったんだぜ。以前のあいつなら拒否してるはずだ」