金木犀のアリア
アランに会いにきた。
ここにアランがいると思った……。



アランに会って、どうするかも考えてはいないけれど……。



この子達には関係のない話だと、詩月は思う。




小首を傾げ、立ち尽くしている女子学生に「いつも聴いてくれてありがとう」と微笑んでみせる。




笑う余裕なんてない。


思い切り愚痴でもこぼしたい気分だ。



思いながらも、詩月は精一杯微笑んでみせた。



女子学生の弾けるような笑顔が、詩月には羨ましく思えた。




 ようやく階段を上りきると、眩しいくらいに色づく紅葉が広がった。



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