金木犀のアリア
神のご加護の元、幾年もの四季を繰り返している樹木の持つ力強さと、輝きに圧倒される。
広い境内だ。
歩き回っても探し人は、安易に見つからない。
詩月は、いつぞやのようにヴァイオリンでアランをとも考える。
――昨日、診断を受けてから、いつもの3分の1もヴァイオリンに触れていない。
ミスなしに弾ける気がしない。
躊躇う詩月の足元に、白い猫が擦り寄ってきた。
膝を折り、しゃがみこみ白い猫を撫でる。
「なあ、お前の主は?」
白い猫は答える筈もないが、詩月は尋ねずにはいられなかった。
「クレセント」
詩月の頭上、腹の底にずしりと響く低い声が降ってきた。
顔を上げ、声の主を見上げる。
詩月が声をあげるより先に声の主が、溜め息にも似た声で「君は……」と呟いた。
広い境内だ。
歩き回っても探し人は、安易に見つからない。
詩月は、いつぞやのようにヴァイオリンでアランをとも考える。
――昨日、診断を受けてから、いつもの3分の1もヴァイオリンに触れていない。
ミスなしに弾ける気がしない。
躊躇う詩月の足元に、白い猫が擦り寄ってきた。
膝を折り、しゃがみこみ白い猫を撫でる。
「なあ、お前の主は?」
白い猫は答える筈もないが、詩月は尋ねずにはいられなかった。
「クレセント」
詩月の頭上、腹の底にずしりと響く低い声が降ってきた。
顔を上げ、声の主を見上げる。
詩月が声をあげるより先に声の主が、溜め息にも似た声で「君は……」と呟いた。