金木犀のアリア
立ち上がり詩月は一礼し、間を置かずに言う。



「ここに来れば、貴方がいる気がして……貴方に会える気がして……」



「私に!?」



アランは詩月を見下ろし、不思議そうな顔をする。



「貴方に会いたくて」



「何か話でも?」



憮然とした顔、抑揚のない声でアランは尋ねる。



「ここでヴァイオリンを弾いた時……。

貴方はとても険しい目で僕が、ヴァイオリンを弾くのを見つめていらした……」



アランは何も言わない。

だだ、詩月を見下ろしている。



「恐いくらいに厳しい表情で……」



アランはただ、白い猫を胸に抱きかかえ、詩月の曇った瞳を見つめている。



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