金木犀のアリア
リリィから出された課題曲が、うまく弾けず母親に「教えて」と声をかけたこともある。
が母親の返事は、いつも同じだった。
「しっかり教則本と楽譜を読んで、自分で答えを出しなさい。
必要なことは全て楽譜の中にあるのだから」
そして、必ず付け加えた。
「貴方の師匠はわたしではなく、百合子先生なの」
幼い頃の詩月にとって、それはとても冷たい響きだった。
母親のヴァイオリン教室を覗くと、彼女は優しく懇切丁寧に教えているのに……と何度、思ったかしれない。
リリィに泣きながら話したこともある。
「お母様のおっしゃっていることは難しいけれど、とても大切なことなのよ。
ヴァイオリニストを目指して弾いていらした方だからこそ言えることなの。
今、ヴァイオリンを教えている方だから言えることなの。
貴方が実の息子だからこそ、生徒さんたち以上に厳しいの」
が母親の返事は、いつも同じだった。
「しっかり教則本と楽譜を読んで、自分で答えを出しなさい。
必要なことは全て楽譜の中にあるのだから」
そして、必ず付け加えた。
「貴方の師匠はわたしではなく、百合子先生なの」
幼い頃の詩月にとって、それはとても冷たい響きだった。
母親のヴァイオリン教室を覗くと、彼女は優しく懇切丁寧に教えているのに……と何度、思ったかしれない。
リリィに泣きながら話したこともある。
「お母様のおっしゃっていることは難しいけれど、とても大切なことなのよ。
ヴァイオリニストを目指して弾いていらした方だからこそ言えることなの。
今、ヴァイオリンを教えている方だから言えることなの。
貴方が実の息子だからこそ、生徒さんたち以上に厳しいの」