金木犀のアリア
夕日の中、詩月が立っている位置から演奏者の顔は見えなかったが、演奏しているのは背の高い男性のようだった。

 詩月は肩に抱えていたヴァイオリンケースからヴァイオリンを取り出し、音色に音を重ねる。

一瞬、演奏が途切れたのに気づいた。

が、詩月は気付かなかったふりをし演奏する。

 拙い演奏と詩月の演奏。

2つのヴァイオリンから奏でられる調べは、離れてはいたけれど確かに調和していた。


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