金木犀のアリア
ピアノを止めてしまおう、真剣に悩みもした。



 高校のピアノ教師とそりが合わず、教師の指導が嫌で嫌でたまらずに、堪り兼ねレッスン中、教師に手を挙げ、自主退学を申し出て、聖諒高校に編入した。




後悔はしていない。

悩み苦しんだ事で、1つ壁を越えられたと思っている。


気付けたこともあると感じている。




 あの日、感情任せに弾いたのは、奇しくもショパン。



ショパン「舟唄(嬰へ長調作品60)」だった。



自分の技量で果たして、どれほどの思いを伝えられたのか?



選曲が正しかったのかどうか?さえも……あの時はどうでもよかった。



 ショパン「舟唄」。

小舟揺らす波、陽の光に照らされ煌めく水面。


穏やかに、進む舟を思い描き今尚、鎮まらぬ魂と戦争の怒りを静める。


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