金木犀のアリア
安らぎと祈りと平和を奏で、抑えていた感情や口に出して言えない言葉や、どう足掻いても吹っ切れずにいる得体の知れない、心に巣食う闇。



ただ、一掃したかった。




 窓辺で誇らしげに咲くブーゲンビリアを眺めながら、紅茶を口に運ぶ。



一青窈風の澄んだ歌声が耳に心地よい。



初めて「島唄」を聴いた、あの日とは違った安らぎを感じた。



人の思いは、これほどまでに暖かいものだと、再認識する。



人の祈りは、これほどまでに心を打つものだと改めて、胸に刻む。




されば――。


果たして自分の奏でる音楽は、どうなのか?


自問自答する。



人の心の奥ひだまで届くのか、あるいは人の心の琴線を震わせられるのか?



紅茶を飲み終え、カップを指で弾くと、小さく鈴の鳴るような音が響いた。



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