金木犀のアリア
 テレビで自殺や心中などのニュースが度々流れる。


「自殺」とは、読んで字の如く……自らを殺すと云う意味だ。



人様を殺せば罪になり、自殺が罪にならないのは可笑しな話だ。



詩月は、妙な理屈を考える。



見投げする人は、靴を脱いで「儚い人生(履かない人生)でした」と主張しているのだと、詩月は聞いたこともある。



幸せを微塵にも感じはしなかったのか?と問いたくなる。



生きたくても生きられなかった命もあるのにと、詩月はなじりたくなる。



何が不幸で何が幸せか?も未だ、定かではないのに。


 胸に手を当て、「トクン」と響く音と感触。




ただ、それだけのことが発作を起こすたびに、どれだけ凄いことかを詩月は、思い知らされる。




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