金木犀のアリア
 ベートーベン交響曲 第5番「運命」は耳が、聞こえなくなってから作曲された曲だと教わった。



作曲家として、音楽家として、耳が聞こえなくなるということが、どれほど致命的か。



怒り、苦しみ、嘆きを1度に吐き出し、抗えない運命を吹っ切るように描かれた激しく力強い曲は、ベートーベンの魂の叫びのようだと詩月は思う。




あの迫力、あの激しさ、あの躍動感はヴァイオリン1基では、とても表現できないなと思う。



全身に波動してやまない慟哭、魂の叫び声は「生きている、それでも生きてやる」との強い意志にも思えて胸を打つ。




息詰まるほど圧倒的な意志を突き付けられ、言葉さえ忘れさせる曲。



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