金木犀のアリア
今、詩月が師事しているヴァイオリンの師匠は、詩月の演奏を「曲に入り込むと、感情の抑えが利かなくる傾向にある」と言う。
コンクール本選前日。
「本選では冷静に、慎重に、丁寧に、弾くように」と師匠から厳しく念を押された。
が、弾き始めると詩月は師匠の助言など頭になかった。
明け透けに感情を解放し、「これが僕のチャイコフスキーだ」と言わんばかりの挑むような演奏をする。
溢れ出す思いを制御できない。
詩月には客席で苦い顔をし、舞台上を睨む師匠の姿さえも想像できない。
続けて本選自由曲を弾く。
曲は「懐かしい土地の思い出」詩月の中で、1番大切な曲だ。
――音は心だ。
思いをこめて弾けば必ず楽器が応え、心を感じて歌ってくれる
鶴岡八幡宮で、アランに言われた言葉が思い出される。
コンクール本選前日。
「本選では冷静に、慎重に、丁寧に、弾くように」と師匠から厳しく念を押された。
が、弾き始めると詩月は師匠の助言など頭になかった。
明け透けに感情を解放し、「これが僕のチャイコフスキーだ」と言わんばかりの挑むような演奏をする。
溢れ出す思いを制御できない。
詩月には客席で苦い顔をし、舞台上を睨む師匠の姿さえも想像できない。
続けて本選自由曲を弾く。
曲は「懐かしい土地の思い出」詩月の中で、1番大切な曲だ。
――音は心だ。
思いをこめて弾けば必ず楽器が応え、心を感じて歌ってくれる
鶴岡八幡宮で、アランに言われた言葉が思い出される。