金木犀のアリア
「文化祭は週末なんですよ。

デュエットなんて今頃、予定変更されて満足な演奏ができるとでも?」



「ほお?」



学長が間の抜けた声を出す。




「それに、ショパンの曲を仕上げをしている段階ですし、僕はピアノ専攻です」



「それは承知しているよ」



「失礼ですが、学長。

貴方がピアノでショパンをと指定なさったんですよ。

今さら……」



「頑固だな、君は」



学長は頬杖をつき、詩月を見上げる。



「演奏するのは僕です。

貴方ではない。失礼します」



詩月は苛立ったようにそれだけ言って、学長室の扉を荒々しく開け退室し、今モルダウへ向かっているのだ。




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