金木犀のアリア
3章/詩月
1話/夕暮れ
練習室から出てきた郁子は、深く溜め息をつき重い足取りで校門へ向かう。
「浮かない顔だな」
校門前に車を停め、郁子を待っていた安坂は、低く張りのある声で言うと微かに口角を上げた。
「貢、ピアノの課題曲がどうも納得いかないの」
「だろうな。郁、最近のお前の音には覇気がない」
「貢!?」
「音符を追ってるだけでは演奏ではない……って、お前の場合は追いたてられているようだ」
郁子は、はっとしたように安坂を見上げ、涙目になる。
「ちょっと、付き合え」
安坂は言うなり、郁子を強引に助手席へ乗せ、車を走らせた。
「貢!? どこに行くの?」
戸惑う郁子に安坂は、運転しながら優しく尋ねる。
「浮かない顔だな」
校門前に車を停め、郁子を待っていた安坂は、低く張りのある声で言うと微かに口角を上げた。
「貢、ピアノの課題曲がどうも納得いかないの」
「だろうな。郁、最近のお前の音には覇気がない」
「貢!?」
「音符を追ってるだけでは演奏ではない……って、お前の場合は追いたてられているようだ」
郁子は、はっとしたように安坂を見上げ、涙目になる。
「ちょっと、付き合え」
安坂は言うなり、郁子を強引に助手席へ乗せ、車を走らせた。
「貢!? どこに行くの?」
戸惑う郁子に安坂は、運転しながら優しく尋ねる。