金木犀のアリア
「郁。周桜の噂、知ってる?」



「噂?……あぁ、色んなところで演奏してるっていう?」



「聴いたことはあるか? 
周桜の街頭演奏を」



「遊びで弾いてる演奏でしょう!?

みんな実技の課題曲と自由曲を必死で練習してるのよ。

暢気に遊んびで弾いてる人の演奏なんて聴いてる時間なんてない。

停めて、降りる」



「……本当にそう思うなら、お前の耳は節穴だ」



「っ、なんですって!?」



「聴きもしないで何がわかる?

噂だけでいったい何がわかる?」



「だって、彼が授業やレッスンでも本気で弾いてるのを聴いたことがないし、彼は適当に弾いても無難に、あの厳しい教授の『良し』をもらってる。

練習しなくても上手く演奏できるから、色んな場所で遊びで弾いてるんでしょう!?」



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